計算力学研究センター > MCX研究所と新型マイクロチャンネル熱交換器(MCX)

低圧力損失、小型、高効率を特長とする新型マイクロチャンネル熱交換器(MCX=Micro-channel Heat Exchanger)は、東工大において、三次元熱流動解析(3D-CFD)
を駆使して、新型ガスタービンの再生熱交換器と家庭用ヒートポンプ式給湯器(エコキュート)のガスクーラーとして開発され、その画期的な性能が伝熱流動試験で検証
された。
新型MCXは熱交換器として汎用的であり、用途は当初の開発対象に限定されない。
MCX研究所は、幅広く産業界で活用してもらうことで、大学の研究成果を社会に還
元することを目指し、平成21年3月23日に設立され、下記を実施する。


1.小型化 (L)
熱交換器の長さ(L)は以下で評価される。
L = (Dh/4J) Pr2/3N
ここで、J=コルバーンのJファクター、 Dh = 水力等価直径、
L = 熱交換器の長さ、 Pr = プラントル数、
N = (Tout-Tin)/ΔTLMTD、Tout = 出口温度、Tin = 入口温度、
ΔTLMTD = 対数平均温度差。
すなわち、Dh を小さくできれば、L は小さくなり、熱交換器は小型化される。エッチング技術では、製作コストを上げることなく流路を微細に形成することが可能であり、熱交換器は容易に小型化される。例えば、エコキュートのガスクーラーに適用すると、(水側の圧力損失は約1/9 で)約1/4 に小型化される(図3参照)。
2.高耐圧性 (σ)
耐圧性は下式で計算される応力σにより評価される。
Δ応力:σ = PDh/2t
ここで、 P = 流体圧力、t = 流路部板厚
エッチングでは、微細な流路を形成することが容易で、Dh を小さくでき、その結果σは小さくなり、耐圧性は高くなる。ただし、Dh を小さくすると、圧力損失は増大する。
3.高耐熱性、耐食性
MCXでは、エッチングした金属板は拡散接合されるので、接合部においても母材の強度と耐食性が保存され、耐熱性と耐食性は高い。

(英国のHeatric 社が石油化学プラントなどに供給している)従来型は図4に示すジグザグ流路を有する。このMCXは、耐圧性と耐熱性が高く、従来のシェル&チューブ型よりコンパクト化できるという特長を有するが、圧力損失が高いという欠点のため、適用先は、圧力損失が問題とならない高圧で運転されるプラントに限定されていた。

新型MCXは、従来型の利点である高伝熱性能(コンパクトさ)を維持したまま、欠点の高圧力損失を除去することで、適用先が高圧プラントに限定されていた制約を取り除き、プラントの小型化・高効率化により、設備コスト低減、地球温暖化ガス放出量削減、燃料資源の有効活用等に貢献することを目指す。

ジグザグ流路内の流速分布を3D-CFD により解析した。その結果、図5 a)に示すように、局所的な高速流域が形成され、その曲がり部において渦が発生していることが判明した。この解析から、渦生成に消費されるエネルギー損失が大きな圧力損失の原因であることを解明した。そこで、曲がり部で渦の形成されない流路を追究し、それが達成できるフィン形状として、図6に示す形状を得た。この新型のS字フィン流路では、図5 b)に示すように、流れが均一で、渦の発生が抑制され、圧力損失が低減される。

熱交換器の性能は、伝熱性能(コンパクトさ)と圧力損失の両面から評価される。両者を、縦軸と横軸に取り、代表的な流路間での性能を比較すると、図7に示す通りとなる。新型S字フィン流路では、従来型のジグザグフィン流路と比較して、伝熱性能は同等で圧力損失は約1/6に低減される。なお、プレート型熱交換器として代表的なルーバーフィン型と比較して
も、伝熱性能は約10%高く、圧力損失は約1/3 となる。また、連続の正弦曲線フィンでも圧力損失は同程度に低減されるが、伝熱性能は約20%低下する。

図8および図9にガス・ガスの間および超臨界CO2・水間の伝熱流動試験装置を示す。両装置により、ガスタービン発電サイクルの再生熱交換器およびエコキュートのガスクーラーとして、画期的な性能が検証された。図10には、図8 a)に用いた新型MCX試験体を示す。

当初の開発対象であったガスタービンとエコキュートに加えて、燃料電池、コジェネ設備、空調機器、電子機器、石油・天然ガス・バイオマス化学プラント、廃熱回収設備等などのエネルギー関連分野での採用が期待される。

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