クイックスタート(重要)
チュートリアルとして以下の諸条件のもとでFe-O-S-Cr系の計算をします。
以下の手順を踏む前にMALTは起動されFe-O-S-Cr系の化合物系をすでに
取得していなければなりません。なおここでは9回のCasesについて
連続して計算を行う場合を取り上げますが、1Caseのみつまり平衡点1点のみの
計算に限るならばプラットフォームを最初から利用するほうが便利で細かい設定も可能です。
その場合も手順2までは同様ですがその後プラットフォームメニュー
によりプラットフォームを表示して下さい。
Cases回数 |
9 cases |
計算モード |
Gibbs |
温度 |
1200K より 2000K まで増分 100K |
初期モル値 |
Fe : 9
SO2 : 10
Cr : 1 |
gemを起動するには4通りの方法があります。
1番目の方法はファイルエクスプローラーでgem.exeをダブルクリックするという通常の方法です。
gemはFig.1のように立ち上がります。
2番目の方法はMALTのメインメニューでtools > gemを実行する方法です。この場合は
gemはMALTで現在検索されている化合物系のデータとともに
Fig.2のように現れます。
3番目の方法はウインドウズのスタートメニューにあるファイル名を指定して実行を
使う方法です。この場合ファイル名'gem.exe'を記述する方法に以下の手法のいずれか
を用いることができます。
- 単に'gem.exe'と入力します。これは1番目のgemの起動と同じです。
- MALT Directを意味するスイッチmdを付けて'gem.exe /md'と入力します。これは2番目の起動と同じです。
- すでに保存されているプロジェクトファイル名(*.gem)を指定して'gem.exe ProjectName.gem'と入力します。
Open Project Menuを参照して下さい。
あるいはウインドウズOSのもとでファイル拡張子'.gem'にプログラムgemを関連付けておけばこの最後の方法は
ファイルエクスプローラーでプロジェクトファイルをダブルクリックすることでも実現できます。
4番目の方法はバッチファイル(*.bat)によるものです。この方法で複数のプロジェクトファイルを連続処理して出力することが可能になります。
詳しくは高度な使い方を参照してください。
Fig.1 : gemの立ち上がり画面 |
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メニュー: File >
Malt Direct
または ツールバーにあるMalt Direct ボタン。
この手順は手順1において1番目のgem起動法を使った場合のみ必要です。
gemは現在MALTで取得されている化合物系を取り込みFig.2
のような画面が現れます。図中のアルファベットを今後の説明で用います。
Fig.2 : 熱力学データ取得後の画面 |
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Cases回数として'9'をツールバー中央にあるエディットボックス
(A in Fig.2)に入力しエンターキーを押して下さい。
この操作はいつでもできますが、Cases回数を増やした場合は増やしたCasesのところに初期条件値を埋めなければ
なりません。
---別の方法としてはコマンドボックスにてNTコマンドを使う方法もあります。
Casesシートの3行目の左端セル(B in Fig.2)
を左クリックすると文字G(ギブズモード:外圧指定のもとで系のギブズエネルギーを最小化する)と
文字A(ヘルムホルツモード:体積指定のもとで系のヘルムホルツエネルギーを最小化する)が交互に現れます。
これにより計算モードを設定します。
---別の方法としてはコマンドボックスにてGまたはAコマンドを使う方法もあります。
単に温度(単位はKのみ)をCasesシートのTemperature行の各セルに直接入力することができます。
しかし、もし温度の変化を初期値と増分により規則的に指定できるならば'Temperature(K)'が表示されている
2行2列目のセル(C in Fig.2)を左クリックして
下さい。プロンプトフォームというダイアログボックスが現れるので初期値(1200)、コンマ(,)、増分(100)
の順に、すなわち、'1200,100' (Fig.3) と入れてOKボタン(またはエンターキー)を
押下して下さい。Temperature行のすべてのセルが指定された初期値および増分によって定められる値で埋められます。
増分の値は通常の差分値で与えることができる他、増分の数字の頭に文字@をつけて乗数の意味で指定することも
できます。
この乗数値指定の例および別の方法としてコマンドボックスにて
Tコマンドを使う方法がありますのでそちらも参照して下さい。
Fig.3 : 温度、圧力/体積、初期モル値を指定するプロンプトフォーム |
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Fig.3A : 熱力学データの有効温度範囲 |
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設定された温度が各化合物の熱力学データが有効である温度範囲外の場合、その化合物は考慮対象外となり計算に含まれません。
データの有効温度を超えての外挿は可能ですが注意しなければなりません。
特にいくつかの水溶液種では298.15Kのデータしかないため、その場合まったく意味のない外挿になります。
データの温度外挿については水溶液種、その他の化合物のそれぞれについてTools > Settings
で管理することができます。またPlatformにおいては各化合物ごとに外挿のON/OFFを指定することができます。
手順6 |
圧力(atm) / 体積(litre)の設定
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ギブズモードでは圧力(単位はatmのみ)を、ヘルムホルツモードでは体積(単位はlitreのみ)を指定
しなければなりません。これらの設定は温度(K)の設定 と同様です( Fig.2
中のDを左クリック)。今の問題ではプロンプトフォームに'1,0'と
入力します。
---別の方法としてはコマンドボックスにてPまたはVコマンドを使う方法もあります。
初期モル値を設定するのも温度(K)の設定と同様です。
化合物名が表示されているセルを左クリックすることによりプロンプトフォームが
現れます。何も入力されていないセルは値0とみなされます。
---別の方法としてはコマンドボックスにてN1, N2コマンドを使う方法もあります。
---上記以外の特殊な設定については高度な使い方を参照して下さい。
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重要な注意
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初期モル値をmとするとき、mは0.001<m<1000の範囲で指定して下さい。
この制約はgemの数値計算上のダイナミックレンジ
の制約から来るものでgemは1E-8以下の値は無視します。
簡単な反応では1モルのオーダーで入力して下さい。ただし雰囲気ガスを考慮する
場合のようにその1部しか反応に関与しない化合物の総量は上記制限外の大きな
値を入れても問題ありません(しかし1E+10以上の入力は避けて下さい)。
物質の移動量が上記オーダー内に収まるような設定が望ましいといえます。
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RunメニューまたはRun 1 Caseメニュー
によりそれぞれ全Casesの計算または指定されたCaseのみの計算をそれぞれ行うことができます。
Caseを指定するには最上行のCase番号の表示されているセルを左クリックします。この後
Run 1 Caseを実行しSorted Outputメニュー
によってそのCaseの計算結果のソートされた出力を得ることもできます。
計算を途中で中断するにはStop Engineメニュー
によります。
グラフに表示しようとするデータを選択するにはCases, Results および Activitiesシートにおいて
それぞれ選ぶ化合物の行の最左端セル(E in Fig.2)
を左クリックして下さい。色のダイアログボックス(Fig.4)が現れますので表示する線の色を選択して下さい。
もう一度そのセルをクリックするとその選択設定が解除されます。
Graphメニューにより選択された化合物のモル数またはアクティビティが
線グラフとして表示されます。表示の詳細はグラフ表示とその印刷を参照して下さい。
Fig.4 : グラフ上に表示する化合物データの選択 |
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これらの一連の操作の後、Casesシートの内容および系の熱力学データをプロジェクトとして
名前をつけ保存しておくことができます。
Save Projectメニューにより保存されるファイルは
2種類ありひとつは系の熱力学情報を含む*.mcdファイル、もうひとつはCases内容および
保存したmcdファイルの名前を含む*.gemファイルです。
これにより容易に同じ条件で計算を再開することができます。
ただしその場合でもMALTはすでに起動されていることが必要不可欠です。